美人のとなり

昔、飲み会で美人の隣に座った。

 

美人ちゃんは美人なだけでなく、優しく、コミュ力もあり、頭脳明晰。

自分が美人であることをちゃんと知っているし、誰のことも否定しないイイ子。

美人度で言えば、街を歩いていて彼女とすれ違ったら知らない人でも振り返るぐらいの美人。

 

その子のとなりに、座った私。

美人度で言えば、街にいたら電柱と同化できる程度のごく平均的というか、それ以下ぐらいの顔。

 

飲み会の席で、その美人ちゃんのとなりに座ったのは、はじめてのことだった。

 

お酒が好きらしく、ワインを注文。

すかさず、グラスを持った男子が現れ、グラスを配る。

別の男の子がワインを注ぐ。

かと思えば別の男の子が別のワインのボトルをもって現れ、美人ちゃんに新しいワイングラスを渡す。

そこから、次々と現れる男の子たち。

お酒をもって現れては彼女と、ついでに隣にいる私のコップにお酒を注いでは消え(というかどかされ)、次の男の子がやって来る。

男の子がやって来ては彼女をほめ、からかい、彼女を笑わせ、時には下ネタを言い、二次会にも来るように説得する。

そんな彼らに嫌な顔ひとつせずに、やさしく対応する美人ちゃん。

 

美人ちゃんはお酒好きで強いが節度を持っているので、飲みすぎたりはしない。

私は酒が弱い。

ついでに注がれては困る。

だが、男の子たちはそんなことには気づかない。私にお酒を接ぐのは、ついでなのだから。

 

 

次々と現れる男の子たちの名前もわからない。

何度はじめましてと言ったことか……

次々と現れるので覚える間もなく交代していく。

美人ちゃんと会話するために、ついでに私に話しかけてくれる男の子たちも、優しいと思う。

 

正直、私だって美人ちゃんと話したい。

友好を深めたいと思ったから、隣に座ったのだ。

しかし、次々と現れる男の子たちに圧倒され、ほとんど会話をする暇もなかった。

 

トイレにいき、席に戻れば当然のことながら席はなくなっていた。

美人ちゃんに一言断り、別の席に移動した。

移動先の席では、一人一人とゆっくり会話ができた。

 

少し離れた席から美人ちゃんを見ていたが、

相変わらずまわりには入れ替わり立ち替わり男の子が現れてはお酒を注いで、次の男の子にどかされて……を繰り返していた。

 

現れる男の子たちの中には、デリカシーがなく失礼なことを言う人や聞く人もいた。

そんな人へも、苦笑いをしながらやさしく対応している美人ちゃんはほんとうに美人だと思った。

 

 

 

美人ちゃんのことは好きだ。

とてもイイ子で、大好きだ。

 

 

でも、次の飲み会では彼女のとなりに座るのはやめようと思った。

あんなにめまぐるしいところでは、落ち着いてお酒も飲めないしご飯も食べれない。

次々渡されるお酒も飲みきれない。

なにより、まともに一人の人と話すことすらできない。

正直、ついでだった私は話しかけてこない男の子もいたのでその間に休憩することができたが、美人ちゃんはその間も男の子の相手をしていたのだ。

 

美人は美人で、大変なんだな~と思った。